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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)1650号 決定 1951年3月15日

本籍並住居

岐阜市金園町四丁目二五番地

土木請負業

竹内利次

明治二八年八月一五日生

右に対する臨時物資需給調整法違反被告事件について昭和二五年五月一一日名古屋高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人田中喜一の上告趣意について。

論旨は原判決をもつて起訴のない事実につき被告人を有罪としたものと前提して原判決は大審院の判例に反するものというのであるが、論旨には原判決の反すると主張する大審院の判例を具体的に挙示していないのであるから、論旨は刑訴規則二五三条の規定に違反する不適法の上告申立であるといわなければならぬ。しかのみならず、所論の起訴状に工事請負業竹内利次とあるも、また、原判決が株式会社平和組の代表者たる竹内利次と説示するのも等しく工事施行の行為者たる竹内利次一個人を指すものであつて、法人たる株式会社平和組を起訴する趣旨でないことはいうまでもない。されば工事施行者として被告人竹内利次を有罪とした原判決には所論のように不告不理の原則に反する違法は存しないから、本件には刑訴四一一条を適用して原判決を破棄しなければ著じるしく正義に反するものともいえない。

被告人の上告趣意について。

論旨縷述するところは結局原判決の是認した第一審判決の量刑を非難するに帰し、明らかに刑訴四〇五条所定の上告適法の理由に該当しないし、また、同四一一条を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとも認められない。

よつて、刑訴四一四条三八六条一項二号に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 澤田竹治郎 裁判官 眞野毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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